山形のとあるマタギから、こんな話を聞いたことがある。
「6人では、山に入っちゃいけねぇんだ」

理由を聞くと、
昔、この集落で炭焼きをしていた6人の男たちがいた。
冬の炭焼きの帰り道だったという。皆で炭窯をいくつも作り、
泊まり込みで作業していたが、その帰りに雪崩に巻き込まれ、2人が亡くなったと伝えられている。
それ以来、「6人山は悪い」と言われるようになったのだという。
実際に、熊狩りへ向かう朝に6人揃ってしまうと、「今日は中止だな」となる。
「山には6人で入ってはいけない」
調べてみると、こんな昔話が伝わっていた。
六人組の祟り山(むかしばなし)
むかしむかし、東北のある村に“ナカダケ”という、
気むずかしい山の神さまがいると恐れられていた山がありました。
この村では、山に入るときは7人が理想とされていました。
5人でも悪くはない。けれど、6人だけは絶対にダメだと、昔から言われていたのです。

ある秋の日、若い衆がキノコ狩りに行くことになりました。
もともとは7人で行く予定でしたが、
当日になって1人が「ちょっと用事ができた」と減り、6人に。
年寄りたちは「6人じゃいけねぇ」と止めましたが、若者たちは笑ってこう言いました。
「なんだって?人数で運が変わるもんか。迷信、迷信!」
山の神さまが“気にする数”
午前中は何事もなく、ナラタケやボリがどっさり採れました。
ところが、昼を過ぎたころから雲行きが怪しくなります。
急にガスが出て、何度も通った道でも方角がわからなくなってしまいました。
日がどっぷり暮れて、なんとか全員が村へ戻れたものの、
誰もキノコを持っておらず、全員が口をそろえて言いました。
「おかしい…まるで山に試されたみてぇだった」

村の長老がひと言、ぽつりとつぶやきました。
「だから言ったべ。6人は“割れる数”で、山の神さまが嫌うんだ。7人がちょうどええ」
偶数は割れる、不吉な数字?
この民話の根っこには、
「奇数は縁起がいい、偶数は縁起が悪い」という、昔ながらの考え方があると言います。
たとえば、
- 4は「死」に通じる
- 6は「ろくでなし」とも読める
- 偶数は“割れる”ので、仲間割れや不吉を連想させる
……といった具合です。
山形のマタギはいまだに、6人山を気にしているとか、
“命の境目”に近い場所では、数字に敏感な信仰が今でも根強く残っていると感じました。
コメント